神戸家庭裁判所 昭和36年(家イ)301号 命令 1961年6月16日
申立人 中山太郎(仮名)
相手方 中山和子(仮名)
主文
当事者双方は本件調停手続の終了するにいたるまで、双方間の長男悟を現状どおり香川県三豊郡詑間町大字箱○○○番地の申立人の両親中山太郎、同ミネのもとに同居させておくこと。
(家事審判官 坂東治 調停委員 和田喜和 調停委員 高谷久二郎)
注意 当事者が正当な事由がなくこの命令にしたがわないときは家事審判法第二八条により五、〇〇〇円以下の過料に処せられることがある。
事件の実情
申立人と相手方は恋愛により昭和三一年一月結婚したが、性格が合わないところへ申立人が肝臓病にかかり昭和三四年五月頃から勤務先の会社を欠勤し始めたため収入が減じ家庭生活が苦しくなつた。これらの原因が遂に離婚問題にまで発展して昭和三五年三月から双方は別居することとし、双方間の子供(長男四歳)は申立人が田舎の両親に託した。その後相手方は申立人に手切金として金六万円を請求したが、申立人は内金三万円を支払い子供は申立人の方で育てるという一応の口約が為された。ところが相手方は昭和三六年五月頃子供に会いたいといつて田舎から神戸の自己の住所へ連れ帰りそのまま約束を破つてその子を田舎へ返さない。その理由は手切金が三万円未払のためであるという。申立人は最近子供を田舎へ帰らさなければならない理由が生じたので相手方と話し合つたが、相手方は頑として応じないのでこの調停の申立を為したというのである。
その後申立人は病中の祖父が孫の顔を見たいというところから相手方の反対を押して子供を田舎へ連れ帰つたが、相手方はこれを警察沙汰にしかねない状態であるので、調停委員会は調停成立に至るまで子供の福祉のため取り敢えず申立人の両親と同居させるのを相当と認め、その旨の仮の処分を命じた次第である。